取引先のチェックシートや官公庁の資料で、BCPと並んで「BCM(事業継続マネジメント)」という言葉を見かけて、「うちはBCPは作ったけど、BCMはやっていない…?」と不安になったことはありませんか。結論から言えば、BCPは「計画という文書」、BCMはその計画を作り・回し・改善し続ける「経営の仕組み」です。この記事では2つの言葉の関係を整理し、認証を取らない中小企業が「等身大のBCM」として何をすればよいかをまとめます。
まず結論――BCPは「文書」、BCMは「回す仕組み」
BCP(事業継続計画)は、災害やシステム障害などで事業が止まりかけたとき、「何を優先して、誰が、どう動くか」を決めた計画そのものです。基本の作り方は「BCP対策とは?中小企業が今すぐ取り組むべき5つのステップ」で解説したとおりで、成果物は紙やファイルの「文書」として残ります。
一方のBCM(事業継続マネジメント)は、その文書を中心に置いた平常時からの継続的な活動全体を指します。内閣府の「事業継続ガイドライン」(令和5年3月版)は、BCPの策定だけでなく、維持・更新、予算や資源の確保、事前対策の実施、教育・訓練、点検、継続的な改善までを含む平常時からのマネジメント活動をBCMと呼び、経営レベルの戦略的活動として位置づけています。
国際規格で言うと。BCMを組織的に回す仕組みはBCMS(事業継続マネジメントシステム)と呼ばれ、国際規格 ISO 22301:2019(日本ではJIS Q 22301:2020)に要求事項がまとめられています。第三者認証を取ることもできますが、認証はあくまで任意です。取引先から認証を求められるケースを除けば、中小企業は規格の「考え方」だけを借りれば十分です。
なぜ言葉が分かれているのか――「作って終わり」を防ぐため
わざわざBCPとBCMを区別するのは、「計画はあるのに、いざという時に使えない」会社が多いからです。民間調査会社・帝国データバンクの2026年調査では、BCPの策定率は全体で21.4%と過去最高になりました。しかし策定はスタートにすぎません。担当者が代わって誰も中身を知らない、機器や取引先が入れ替わって手順が現実と合わない――「中小企業のBCP、年に1度は見直したい5つの項目」で書いたとおり、BCPは放っておくだけで現実からずれていきます。
つまりBCMという言葉は、「文書を作ること」と「事業を守れる状態を保つこと」は別物だ、という戒めでもあります。BCP対策が進まない・続かない理由(「中小企業のBCP対策、なぜ進まないのか?5つの壁と解決のヒント」)の多くは、計画づくりを一度きりのイベントとして扱ってしまうことにあります。BCMは、それを毎年の業務サイクルに組み込むための考え方です。
中小企業の「等身大のBCM」――4つで十分
「マネジメントシステム」と聞くと、分厚い規程集や専任部署を想像してしまいますが、それは大企業のやり方です。中小企業のBCMは、次の4つが回っていれば立派に機能します。
- 経営者が「自分ごと」として関与する
BCMが経営レベルの活動とされるのは、優先順位と予算の判断は経営者にしかできないからです。どの事業を最優先で守るか、事前対策にいくらかけるか――ここだけは担当者に任せず、社長が決める。BCPの1ページ目(「中小企業のBCP策定、最初の1ページに書くべきこと」)に経営者の名前で方針を書くのが、その第一歩です。 - 事前対策を「少しずつ」実行する
計画に「こうする」と書くだけでなく、平常時に手を打っておくのが事前対策です。通信回線の冗長化(「通信回線の冗長化、固定回線とモバイル回線をどう組み合わせるか」)、停電への備え(「BCP対策で見落とされがちな「IT機器の停電対策」入門」)、テレワークで出社できなくても回る体制(「テレワーク時代のBCP、自宅勤務でも業務を止めない仕組み」)――一度に全部ではなく、毎年1つずつ積み上げれば十分です。 - 年1回、点検と小さな訓練をセットで回す
毎年同じ点検日を決めて、5つの項目を見直す(「中小企業のBCP、年に1度は見直したい5つの項目」)。あわせて、連絡網の試験送信やノートPCだけで業務をしてみる程度の小さな訓練(「災害時の業務継続、最小限の準備で最大の効果を出す方法」)を行う。これだけで、BCMの中核である「教育・訓練」と「点検・見直し」が回り始めます。 - 外部の仕組みを「ペースメーカー」に使う
自社の意思だけで回し続けるのが不安なら、外部の期限を利用しましょう。事業継続力強化計画(「事業継続力強化計画の認定を取ってみた|申請から認定まで、中小企業が実際にやったこと」)は計画期間が3年以内で、満了前に更新申請が必要です。この「3年ごとの更新」と「年1回の点検」を組み合わせれば、意思の力に頼らずBCMが回り続けます。取引先の変化や外部への依存(「取引先が止まると、自社も止まる。「見えない依存」という事業継続リスク」)も、この更新のタイミングで棚卸しすると効率的です。
BCMとは、特別な資格や認証のことではなく、
「BCPが今日も使える状態か」を保ち続ける習慣のことです。
まとめ:言葉に身構えない。「回っているか」だけを問う
- BCP=事業を止めないための「計画(文書)」。BCM=その計画の策定・維持更新・事前対策・教育訓練・点検・改善まで含む「平常時からの経営活動」
- 内閣府の事業継続ガイドラインは、BCMを経営レベルの戦略的活動として位置づけている
- BCMSの国際規格はISO 22301:2019(JIS Q 22301:2020)。ただし認証は任意で、中小企業は考え方を借りれば十分
- 言葉が分かれているのは「作って終わり」を防ぐため。文書の厚さではなく「回っているか」で差がつく
- 中小企業の等身大BCMは4つ=①経営者の関与 ②事前対策を毎年1つずつ ③年1回の点検+小さな訓練 ④事業継続力強化計画などの外部の期限をペースメーカーに
BCMの輪を回すとき、毎回土台になるのは「今、社内に何があるか」という現状把握です。事前対策の優先順位も、点検で見つかる「計画と現実のずれ」も、機器やネットワークの今の姿が見えていなければ判断できません。
BCPからBCMへ進む第一歩として、まずは社内のIT環境の見える化から始めましょう。
参考(公式情報)
※制度やガイドライン、規格の内容は更新されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
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計画づくりも、事前対策の優先順位も、年1回の点検も――土台になるのは「社内に何があるか」の正確な把握です。SOLAMILUは、社内のネットワークとIT機器の状況を見える化し、無理なく回り続けるBCMの土台づくりをお手伝いします。
