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2026年9月2日
通信回線の冗長化、固定回線とモバイル回線をどう組み合わせるか

「うちは回線を2本引いているから大丈夫」――本当にそうでしょうか。2本の回線が同じ壊れ方をするなら、冗長化にはなっていません。通信回線の冗長化のコツは、本数ではなく「別々の道」を組み合わせること。この記事では、固定回線とモバイル回線の組み合わせ方3パターンと、失敗しないための5つのチェック、そして2026年4月に始まった非常時ローミングとの関係を解説します。

回線の冗長化とは?――「2本」ではなく「2つの道」

冗長化とは、1つが止まっても業務を続けられるように、予備を用意しておくことです。通信回線なら「光回線が切れたら、モバイル回線に切り替える」がその典型です。ここで重要なのは、予備が本命と「同じ壊れ方」をしないこと。光回線を2本引いても、同じ通信会社の同じ設備を通っていれば、その設備の障害で2本とも止まります。

その点、固定回線とモバイル回線の組み合わせは、通る道がまったく違います。固定回線は地中や電柱のケーブルを、モバイル回線は基地局からの電波を通ります。ケーブルの切断や収容局の障害はモバイルに影響せず、基地局の障害は固定に影響しません。だからこの組み合わせが、中小企業の通信冗長化の基本形になるのです。光回線が止まったときに何が起きるかは、入門編「光回線が止まった時、業務はどう守るか?中小企業の通信BCP入門」で解説しています。本記事はその実践編です。

見落としがちな「共倒れ」のパターンは3つあります。①同じ通信会社の回線を2本(網側の障害で共倒れ)、②固定回線+その回線を使う固定電話やWi-Fi(元が同じ)、③本命も予備も同じ電源につながっている(停電で共倒れ)。冗長化を考えるときは、回線・設備・電源の3つが「別の道」になっているかを確かめましょう。

なぜ今、回線の冗長化なのか

理由1:固定もモバイルも、大規模障害は「起きるもの」になった

ここ数年、固定回線でもモバイル回線でも、全国規模の通信障害が実際に起きています。数時間から数日にわたって電話やデータ通信が使えなくなり、決済や物流にまで影響が及びました。「どの回線も、いつかは止まる」を前提に置くのが、いまのBCPの出発点です。

理由2:クラウド依存で「回線断=業務停止」に直結するようになった

会計も受発注もメールもクラウド、という会社にとって、回線が止まることはオフィスが停電するのと同じ意味を持ちます。社内サーバー時代なら「ネットは遅いが仕事はできる」でしたが、いまは回線が業務の生命線です。テレワーク下の備えは「テレワーク時代のBCP、自宅勤務でも業務を止めない仕組み」もあわせてご覧ください。

理由3:公的な支えは前進した。ただし「自助の代わり」ではない

2026年4月1日、大規模災害や通信障害の際に他社の携帯電話網を使える非常時事業者間ローミング「JAPANローミング」が始まりました。携帯大手各社が参加する大きな前進です。ただし、発動は大規模な災害・障害時に限られ、データ通信は最大300kbpsと最低限。日常的な回線トラブルや自社だけの障害はカバーされません。詳しくは記事の後半で解説しますが、「公助の底上げはされた。でも自社の冗長化は依然として必要」というのが正しい理解です。

冗長化の基本形:別々の道を2つ持つ オフィスからインターネットへ、固定回線とモバイル回線という2つの独立した経路を確保する構成図。 基本形:性質の違う「2つの道」でつなぐ オフィス 道1:固定回線(ケーブル) 道2:モバイル回線(電波) インターネット クラウド 会計・受発注 メール ケーブルの障害は電波に、電波の障害はケーブルに影響しない=共倒れしにくい
図1:固定回線とモバイル回線は通る道が違うため、共倒れしにくい組み合わせになる

組み合わせ方は3パターン――自社に合うのはどれか

組み合わせ方の3パターン 手動切替、自動切替、常時併用の3パターンを費用と切替時間で比較したカード図。 「何分の停止まで許せるか」でパターンを選ぶ パターン 1 手動切替 非常用のモバイルルーターや スマホのテザリングに、 人の手で切り替える。 費用:小(非常用SIM程度) 切替:数十分〜(手間あり) パターン 2 自動切替 ルーターが固定回線の異常を 検知し、モバイル回線へ 自動で切り替える。 費用:中(対応ルーター+SIM) 切替:数十秒〜数分 ▲ 多くの中小企業の現実解 パターン 3 常時併用 2つの回線を普段から同時に 使い、片方が止まっても 通信が途切れない構成。 費用:大(2回線の常時契約) 切替:ほぼゼロ
図2:3パターンの比較。「何分の停止まで許せるか」で選ぶ

どのパターンを選ぶかの基準は、機器の性能ではなく、「自社は通信が何分止まったら実害が出るか」です。決済端末が止まると店が回らないなら自動切替以上、メールが半日遅れても致命傷でないなら手動切替でも十分です。この「許容できる停止時間」は、BCPの1ページ目に書く発動基準とセットで決めておくと迷いません(「中小企業のBCP策定、最初の1ページに書くべきこと」)。

組み合わせで失敗しない、5つのチェック

  1. 「道」が本当に分かれているかを確認する
    固定+モバイルの組み合わせなら経路は自然に分かれます。モバイル回線を2枚使う場合は、通信会社を分けましょう。同じ会社のSIMを2枚持っても、その会社の障害で共倒れします。
  2. 非常時に「何を通すか」を決めておく
    モバイル回線は固定より細く、容量制限もあります。切替後は動画会議や大容量のやりとりを控え、決済・メール・クラウドの基幹業務に絞る、と決めておきます。非常時ローミングのデータ通信が最大300kbpsとされているように、「非常時は最低限」が通信BCPの共通原則です。
  3. 電源も一緒に冗長化する
    停電すれば、光回線の終端装置もWi-Fiルーターも止まります。バッテリー内蔵のモバイルルーターや、ルーター用の小型無停電電源(UPS)をセットで考えましょう。停電対策を含む最小限の備えは「災害時の業務継続、最小限の準備で最大の効果を出す方法」で解説しています。
  4. 切替手順を1枚にして、全員が見える場所に置く
    「切替方法を知っているのが情シス担当1人だけ」では、その人が不在の日に詰みます。誰が・何を・どの順番で切り替えるかを1枚にまとめ、紙でも掲示しておきます。テザリングを使う場合は、誰のスマホを使ってよいかのルールも決めておきましょう。
  5. 年に1回、実際に切り替えてみる
    訓練していない予備回線は、本番で高確率につまずきます。年1回、固定回線のケーブルを抜いて業務がモバイル側で回るかを確認する「抜線テスト」を行いましょう。かかる時間は30分程度です。BCP全体の見直しと同じタイミングで行うのが効率的です(「BCP対策とは?中小企業が今すぐ取り組むべき5つのステップ」)。

2026年4月に始まった「JAPANローミング」で何が変わるか

2026年4月1日から、大規模な災害や通信障害で自分の契約する携帯電話会社の通信が使えなくなった際に、他社のネットワークを一時的に利用できる非常時事業者間ローミング(JAPANローミング)が始まりました。携帯大手各社が参加し、音声通話・SMS・データ通信(最大300kbps)が使える方式と、110・119などの緊急通報に限る方式が用意されています。

これは通信BCPにとって心強い前進ですが、押さえておくべき限界が2つあります。第一に、発動されるのは大規模な災害・障害時だけで、対象地域も指定制です。日常的に起きる「自社の回線だけ止まった」「工事でケーブルが切れた」はカバーされません。第二に、データ通信は最大300kbpsと、通常業務を続けられる速度ではありません。つまり、JAPANローミングは「最後の安全網」であって、自社の回線冗長化の代わりにはならないということです。

公助は「つながる最低限」を守ってくれる。
業務を止めない冗長化は、自助でしか用意できない。

まとめ:本数ではなく「別々の道」を持つ

  • 冗長化のコツは回線の本数ではなく、「同じ壊れ方をしない別々の道」を組み合わせること。固定×モバイルが基本形
  • 共倒れの3パターン(同一キャリア2本・同じ元回線・同じ電源)を避ける
  • 組み合わせは手動切替/自動切替/常時併用の3つ。「何分の停止まで許せるか」で選ぶ。多くの中小企業の現実解は自動切替
  • 非常時に通す業務を絞る・電源も冗長化・手順を1枚に・年1回の抜線テスト
  • 2026年4月開始のJAPANローミングは心強い安全網。ただし大規模時限定・最大300kbpsで、自社の冗長化の代わりにはならない

回線の冗長化を設計する第一歩は、いま自社の通信がどの回線・どの機器を通っているかを知ることです。経路が見えていなければ、「別々の道」になっているかどうかも判断できません。

まずは自社のネットワーク構成の見える化から始めましょう。

参考(公式情報)

※制度の内容や対象は変更されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

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回線の冗長化の前に、まずは見える化から

「別々の道」を設計するには、いまの通信がどの回線・どの機器を通っているかを知ることが出発点です。SOLAMILUは、社内のネットワークとIT機器の状況を見える化し、通信BCPの土台づくりをお手伝いします。

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この記事を書いた人

SOLAMILU編集部|中小企業のITインフラとセキュリティの「見える化」に取り組むSOLAMILUのメンバーが、現場で役立つ情報をお届けしています。

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