社内のネットワーク構成図があっても、「なぜか午後になると遅い」の原因は分かりません。構成図が示すのは「どこにつながっているか」までだからです。そこに「どこにどれだけ流れているか」(通信量=トラフィック)が加わると、見えるものが大きく変わります。この記事では、通信量が見えると何が分かるのか、そして測り方にどんな違いがあるのかを、中小企業の視点で整理します(2026年9月時点)。
構成図だけでは分からないこと
結論から言うと、ネットワーク構成図は「地図」であって「交通量調査」ではないということです。地図があれば道の場所は分かりますが、どこが渋滞しているかは分かりません。ネットワークもこれと同じで、つながりが分かることと、うまく流れていることは別の話です。
現場でよく出てくるのは、次のような相談です。
- 午後になると社内システムが重い。でも原因が分からない
- 回線を増速したのに、体感が変わらなかった
- 特定の拠点・特定のフロアだけ遅い、と言われる
- 「ネットワークが遅い」と言われるが、本当にネットワークのせいかも分からない
いずれも、構成図(「社内ネットワーク図、いつ作りましたか?」)や台帳(「社内のPC・スマホ、何台あるか即答できますか?」)だけでは答えが出ません。どこにどれだけ流れているかを知らないまま、勘で回線を増速したり、機器を買い替えたりしているというのが、多くの会社の実情です。
通信量が見えると分かる3つのこと
結論として、通信量が見えることで分かるのは「遅さの原因」「投資の判断材料」「いつもと違う動き」の3つです。どれも、構成図と台帳だけでは手が届かなかった領域です。
① 遅さの原因を切り分けられる
「ネットワークが遅い」という申告は、実際にはネットワーク以外が原因のこともあります。通信量が見えると、回線そのものが詰まっているのか、特定の機器や端末が使い切っているのか、それともネットワークは空いていてサーバー側の問題なのかを切り分けられます。「午後だけ遅い」の正体が、実はバックアップや大容量ファイルの同期だった、というのはよくある結末です。
② 増速・買い替えの判断が「数字」でできる
回線の増速も機器の入れ替えも費用がかかります。通信量の実績があれば、本当に足りていないのか、それとも足りているのに別のところが詰まっているのかを確かめてから決められます。リース満了や機器更新のタイミング(「リース満了の管理、見落とすと損する3つのポイント」「機器の更新タイミングを逃さない、運用のコツ」)で、上長や経営に説明する材料にもなります。
③ いつもと違う動きに気づける
通信量は、セキュリティの観点でも手がかりになります。誰もいないはずの深夜に大量の送信が続いている、ふだん通信しない機器同士が急にやり取りを始めた——こうした変化は、量を見ていなければ気づけません。もちろん、これだけで攻撃と断定はできませんが、「おかしい」と気づくきっかけにはなります。
どう測るか――2つのやり方と、それぞれの制約
結論を先に言うと、通信量の測り方は大きく「機器に問い合わせて集める方式」と「端末側で自分の通信を見る方式」の2つがあり、中小企業では後者のほうが現実的なことが多いです。理由は、前者が機器側の準備を前提にしているからです。
機器に問い合わせて集める方式(SNMPなど)
古くから使われてきたのは、SNMP(Simple Network Management Protocol)のように、管理する側からネットワーク機器へ定期的に問い合わせて情報を集めるやり方です。大規模なネットワークでは標準的な方法ですが、中小企業の環境では次のような壁にぶつかります。
- 機器ごとにSNMPを有効にするなど、設定変更が必要になる(対応していない機器もある)
- 管理する側から定期的に問い合わせるため、ネットワークに負荷がかかる
- 無線やVPNなど、問い合わせでは捉えきれない通信がある
- 問い合わせの通信が、セキュリティソフトから誤検知を受けやすい
「機器の設定を触る」というのは、専任の担当者がいない会社にとってはそれ自体がハードルです。触った結果つながらなくなったら業務が止まる、と考えれば、手を出しにくいのは当然でしょう。
端末側で自分の通信を見る方式
もうひとつは、PCやサーバーに入れたソフトウェアが自分自身の通信を見るやり方です。「自分が誰と、どれだけやり取りしたか」を端末側で把握するので、機器の設定を変える必要がありません。外から問い合わせに行かないぶん、上に挙げた制約も受けにくくなります。
SOLAMILUは、この「端末側から通信経路を可視化する」考え方について特許を取得しました(特許第7919795号/2026年9月4日登録)。ネットワーク図の上で、機器と機器のあいだの通信量に応じて経路の見え方が変わる仕組みです。詳しくは「ネットワーク図の表示技術で特許を取得しました」をご覧ください。
何から始めるか――3つのステップ
結論として、順番は「機器をそろえる→図にする→量を重ねる」です。いきなり通信量から入っても、そもそも何がつながっているか分からなければ読み解けません。
- まず、何があるかをそろえる
PC・サーバー・ネットワーク機器を数え、台帳にします(「IT資産管理とは?中小企業が今すぐ始めるべき理由」「ネットワーク機器の棚卸し、簡単に済ませる5つのコツ」)。ここで「誰も知らない1台」が出てくるのが普通です(「未管理デバイスをゼロにする、現実的な手順」)。台帳をExcelで回すことに限界を感じてきたら「Excelでの資産管理、限界はどこにあるか」「IT資産管理ツール、中小企業が選ぶべきポイント」も参考にしてください。 - つながりを図にする
台帳は一覧、図は関係を表します。どの機器がどこにつながっているかを図にしておくと、量を見たときに「この線は何の通信か」が読めるようになります(「社内ネットワーク図、いつ作りましたか?」)。クラウドを使っているなら、社外にあるものも忘れずに(「クラウド移行時代のIT資産管理、考え方の変化」)。 - そのうえで、通信量を重ねる
ここでようやく「どこにどれだけ流れているか」が意味を持ちます。最初から精密な数値を追う必要はありません。多い・ふつう・少ないの3段階が分かるだけでも、見当のつけ方は大きく変わります。あわせて、外向きの機器のサポート期限も確認しておきましょう(「ネットワーク機器のサポート期限、放置したルーターが侵入口になる」)。
台帳は「何があるか」、構成図は「どうつながっているか」、
通信量は「いま、どう使われているか」を教えてくれます。
まとめ:「つながり」に「流れ」を足す
- ネットワーク構成図は地図であって交通量調査ではない。つながりが分かることと、うまく流れていることは別
- 通信量が見えると分かるのは3つ=①遅さの原因の切り分け ②増速・買い替えの判断材料 ③いつもと違う動きへの気づき
- 測り方は2つ。機器に問い合わせる方式(SNMPなど)は設定変更・ネットワーク負荷・捕捉できない通信・誤検知という制約がある
- 端末側で自分の通信を見る方式なら、機器の設定を変えずに済む。SOLAMILUはこの考え方で特許を取得(特許第7919795号)
- 始める順番は「機器をそろえる → 図にする → 量を重ねる」。多い・ふつう・少ないの3段階が分かるだけでも十分に役立つ
「遅い」「重い」という声に、毎回その場しのぎで対応していませんか。原因が分からないまま増速や買い替えを繰り返すのは、いちばん高くつくやり方です。逆に、どこにどれだけ流れているかが見えていれば、打つ手を選べます。
ネットワークの通信量を読み解く前に、まずは社内のIT環境の見える化から始めましょう。
参考(公式情報)
※制度・公表情報は2026年9月時点のものです。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
この記事のFAQ
Q. ネットワークの「通信量(トラフィック)」が見えると、何ができるようになりますか?
大きく3つです。①「遅い」の原因が回線なのか特定の機器なのかを切り分けられる、②回線の増速や機器の買い替えを実績の数字にもとづいて判断できる、③深夜の大量送信のような、ふだんと違う動きに気づける。いずれも、構成図と台帳だけでは分からない領域です。
Q. ネットワーク構成図があれば十分ではないですか?
構成図は「どこにつながっているか」を示す地図で、「どこが混んでいるか」は分かりません。地図があっても渋滞の場所は分からないのと同じです。構成図は出発点として必要ですが、遅さの原因を絞り込んだり投資を判断したりするには、そこに通信量を重ねる必要があります。
Q. 通信量を測るには、ネットワーク機器の設定を変える必要がありますか?
測り方によります。SNMPのように管理する側から機器へ問い合わせる方式では、機器ごとの設定変更が前提になり、ネットワークへの負荷や、無線・VPNなど捕捉できない通信といった制約もあります。一方、PCやサーバーに入れたソフトウェアが自分自身の通信を見る方式なら、機器の設定を変えずに測れます。
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どこにどれだけ流れているかを知るには、その機器が把握できていることが前提です。SOLAMILUは、社内のネットワークとIT機器の状況を見える化し、「図面にない1台」まで含めて、いまの使われ方をつかむ土台をつくります。
