IT機器の更新で一番多い方針は、実は「壊れるまで使う」です。一見むだがないようですが、その日は突然来ます。業務の停止、特急対応の出費、データの救出、代替機の調達――すべてが同時に、最悪のタイミングで。この記事では、機器が持つ「4つの期限」を整理し、更新タイミングを逃さないための現実的な運用のコツを解説します。
機器の「期限」は1つではない――4つある
「まだ動くから大丈夫」という判断は、期限を1つ(故障)でしか見ていません。実際には、機器には性質の違う4つの期限があります。
- ① 物理的な寿命:部品の劣化による故障。予測が難しく、ある日突然来る
- ② サポート終了(EOL):OSやメーカー保守の終了。動いていても、更新プログラムが届かなくなりセキュリティの穴が放置される
- ③ 契約の期限:リース満了・保証期間の終了。過ぎると割高な再リースや実費修理に
- ④ 性能の限界:故障はしていないが、遅くて業務にならない。人件費を静かに食い続ける
危ないのは、②サポート終了です。①の故障は「止まる」のですぐ分かりますが、②は動き続けるのに守られていない状態。見た目に変化がないため、気づかれないまま数年放置されることも珍しくありません。IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」でも「システムの脆弱性を悪用した攻撃」は4位。更新の止まった機器は、攻撃者から見れば鍵のかかっていない裏口です。
なぜ「逃す」のか――Windows 10の教訓
更新タイミングを逃す原因は、担当者の怠慢ではありません。期限が機器ごと・種類ごとにバラバラで、しかも台帳に書かれていないからです。PCはOSのサポート期限、ルーターやVPN機器はメーカーの保守期限、複合機はリース満了――全部の期限を記憶で管理するのは不可能です。
記憶に新しいのは、2025年10月のWindows 10サポート終了です。何年も前から告知されていたにもかかわらず、直前になって「社内にWindows 10のPCが何台残っているか分からない」と慌てた会社は少なくありませんでした。台帳が実態とズレていると、期限が分かっていても対象台数が分からないのです(台帳と実態のズレについては「Excelでの資産管理、限界はどこにあるか」で詳しく解説しています)。
もう1つ深刻なのは、ネットワーク機器です。警察庁の統計では、ランサムウェアの感染経路の大半はVPN機器やリモートデスクトップ経由。つまり更新の止まった外部接続機器は、攻撃の入口そのものです。PCと違って画面がなく、存在自体を忘れられやすいのがネットワーク機器の怖さです(「社内ネットワーク図、いつ作りましたか?」)。
更新タイミングを逃さない、5つの運用のコツ
- 台帳に「4つの期限」の列を作る
機器台帳に、購入日・保証期限・サポート終了日(EOL)・リース満了日の列を追加します。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の付録にはExcel形式の資産管理台帳サンプルがあり、土台に使えます。リース関連の落とし穴は「リース満了の管理、見落とすと損する3つのポイント」をご覧ください。 - 期限を「年間の更新カレンダー」に翻訳する
台帳の期限を年度ごとに並べ替えると、「来年度は更新が集中する」といった山が見えます。山をならして数年に分散させれば、予算も作業も平準化できます。経営層への予算説明も、「壊れたので至急」より「計画表の通り」のほうが圧倒的に通りやすくなります。 - 「人が思い出す」をやめ、通知される仕組みに載せる
期限の3〜6か月前に自動で知らせてくれる仕組み(ツールのアラート、共有カレンダーの繰り返し予定でも可)に載せます。担当者の記憶や引き継ぎメモに頼った運用は、人事異動で必ず途切れます。ツール選びの観点は「IT資産管理ツール、中小企業が選ぶべきポイント」で解説しています。 - 更新の優先順位ルールを先に決めておく
予算が限られる以上、全部は同時に更新できません。おすすめの優先順位は、①外部と接続する機器(VPN・ルーター=攻撃の入口)、②止まると業務が止まる機器(サーバー・基幹PC)、③その他、の順。「どれから直すか」を毎回議論せずに済みます。 - 年1回、台帳と実態を突き合わせる
期限管理は台帳が正しいことが大前提です。年1回の棚卸しで、台帳にない機器・実物のない行を洗い出しましょう(「ネットワーク機器の棚卸し、簡単に済ませる5つのコツ」「未管理デバイスをゼロにする、現実的な手順」)。
更新タイミングの管理とは、機器を長持ちさせる技術ではなく、
「期限を記憶から仕組みへ移す」運用の話です。
まとめ:「壊れてから」を卒業する
- 機器の期限は4つ=①故障 ②サポート終了(EOL) ③契約(リース・保証) ④性能の限界。一番危ないのは「動くのに守られない」EOL
- Windows 10サポート終了(2025年10月)の教訓=期限を知っていても、台数が分からなければ動けない
- 台帳に4つの期限列→年間カレンダーに翻訳→通知の仕組みに載せる、で「思い出す運用」を卒業
- 優先順位は「外部接続機器→業務クリティカル→その他」。更新の山は数年に分散して平準化
- 土台は年1回の棚卸し。台帳が実態と合っていてこそ、期限管理は機能する
期限の管理は、「社内にどんな機器が何台あるか」が正確に見えていることから始まります。台帳にない機器の期限は、誰にも管理できません。
更新カレンダーづくりの第一歩として、まず機器の見える化から始めましょう。
参考(公式情報)
※サポート期限や制度の内容は変更されることがあります。最新の情報は各公式サイト・メーカーサイトでご確認ください。
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期限管理の土台は、「社内に何が何台あるか」を正確に知ることです。SOLAMILUは、社内のネットワークとIT機器の状況を見える化し、更新タイミングを逃さない運用の土台づくりをお手伝いします。
