PCの買い替えは話題になるのに、ルーターやVPN装置の「寿命」を気にしている会社はほとんどありません。壊れていないから、動いているから――しかし攻撃者が最も多く使う侵入口は、まさにその機器です。警察庁の調査では、ランサムウェア被害の侵入経路はVPN機器が6割以上。この記事では、ネットワーク機器のサポート期限(EOL)とファームウェア更新の違い、棚卸しの手順、更新の優先順位を、中小企業向けに整理します(2026年9月時点)。
なぜネットワーク機器が狙われるのか
結論から言うと、インターネットに直接顔を出している機器だからです。PCは社内にあって外から直接は見えませんが、ルーターやVPN装置は「外から接続を受け付ける」のが仕事。攻撃者にとっては、24時間ノックし放題の扉が常に開いているようなものです。
そこに、更新されないという事情が重なります。警察庁「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によれば、ランサムウェア被害の報告は226件で、その約6割が中小企業。そして被害組織へのアンケートでは、侵入経路のうちVPN機器が6割以上を占めています。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けの1位はランサムウェアで、脆弱性を突く攻撃が上位に並びます。
つまり、多くの会社が「PCのウイルス対策」には気を配りながら、実際に破られているのは玄関の鍵のほうという構図です。しかもネットワーク機器は、担当者が変わると誰も触らなくなり、設置から5年・10年と放置されがちです。
「サポート期限」と「ファームウェア更新」は別物
結論として、ファームウェア更新は「サポート期間中しかできない」延命策です。この2つを混同していると、「更新しているから大丈夫」と思い込んだまま、修正版が二度と出ない機器を使い続けることになります。
ファームウェア更新は、機器の中で動くソフトウェアを新しくすること。弱点(脆弱性)が見つかったとき、メーカーが修正版を配布してくれるので、それを適用します。PCでいうWindows Updateに当たります。
サポート期限(EOL)は、その修正版の配布そのものが終わる日です。EOLを過ぎた機器は、新しい弱点が見つかっても修正版が出ません。つまり、どれだけ真面目に更新作業をしていても、穴が開いたまま塞げなくなります。Windows 10のサポート終了と同じ構図が、ルーターやVPN装置にも存在するわけです。
「壊れていないのに買い替えるのはもったいない」という感覚が、いちばんの落とし穴です。ネットワーク機器は、壊れて動かなくなることより、動いたまま安全でなくなることのほうが先に来ます。故障は目に見えますが、EOLは何も起きません。ランプは今日も緑のまま点灯しています。だからこそ、機器の「期限」は人が管理するしかありません(考え方は「機器の更新タイミングを逃さない、運用のコツ」と同じです)。
いま何をすべきか――4つの手順
結論はシンプルで、「数える→期限を調べる→更新する→買い替え計画を立てる」の4手順です。特別な機材も専門知識も要りません。
- ネットワーク機器を全部数える
ルーター、VPN装置、スイッチ(ハブ)、無線アクセスポイント、そしてファイアウォール。まずは「どこに・何台あるか」をリスト化します。棚卸しのコツは「ネットワーク機器の棚卸し、簡単に済ませる5つのコツ」に整理したとおりで、天井裏や物置の中、事務所の隅に置かれた「誰も知らないハブ」が出てくるのが普通です(「未管理デバイスをゼロにする、現実的な手順」)。あわせて、社内ネットワーク図(「社内ネットワーク図、いつ作りましたか?」)があれば突き合わせを。 - それぞれのサポート期限とファーム版数を調べる
機器の型番を控え、メーカーのサイトで「サポート期限」「最新のファームウェア版数」を確認します。設置業者や保守契約先がいるなら、「うちの機器のEOLがいつか、一覧をください」と依頼するのが最短です。台帳には、購入日・保証期限に加えてサポート終了日の列を足しておきましょう(台帳運用の限界を感じたら「Excelでの資産管理、限界はどこにあるか」も参考に)。 - 外向きの機器から順に更新する
優先順位は明確で、①VPN装置・ファイアウォール(外から接続を受ける)→②ルーター→③無線アクセスポイント→④社内スイッチの順。外に面しているものほど狙われやすいからです。更新は業務が止まる可能性があるので、夜間や休業日に。あわせて、初期パスワードのまま運用していないか、管理画面がインターネット側から開けるようになっていないかも確認してください。この2つは、脆弱性以前の問題として狙われます。 - EOLを過ぎた・近い機器は買い替え計画に載せる
すでにEOLを過ぎている機器は、更新では守れません。予算の都合ですぐ替えられないなら、「いつまでに替えるか」を決めて計画に載せる。リース満了のタイミング(「リース満了の管理、見落とすと損する3つのポイント」)や、他の機器の更新時期(「機器の更新タイミングを逃さない、運用のコツ」)と合わせると、まとめて手当てできます。
ネットワーク機器は、壊れて止まるより先に、
動いたまま「守れない機器」になります。期限は、人が見るしかありません。
まとめ:玄関の鍵を、年に1度は見る
- ランサムウェアの侵入経路はVPN機器が6割以上(警察庁・被害組織へのアンケート)。被害の約6割は中小企業
- ファームウェア更新は「サポート期間中しかできない」延命策。EOLを過ぎた機器は、弱点が見つかっても修正版が出ない
- 手順は4つ=①ネットワーク機器を全部数える ②型番からサポート期限とファーム版数を調べる(保守業者に一覧依頼が最短) ③外向きの機器から更新 ④EOL済み・間近は買い替え計画へ
- 更新の優先順位は VPN・ファイアウォール → ルーター → 無線AP → 社内スイッチ
- あわせて「初期パスワードのまま」「管理画面が外から開ける」の2点も確認。脆弱性以前の問題として狙われる
この記事の手順は、すべて手順①「数える」から始まります。ところが実際にやってみると、多くの会社で「図面にないハブが出てくる」「VPN装置の型番が分からない」「そもそも誰が設置したか不明」といったことが起こります。期限を管理する以前に、機器そのものが見えていないのです。
ネットワーク機器の期限管理も、まずは社内のIT環境の見える化から始めましょう。
参考(公式情報)
※統計・制度は2026年9月時点の公表情報です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
この記事のFAQ
Q. ネットワーク機器のサポート期限(EOL)とは何ですか?
メーカーがその機器向けの修正プログラム(ファームウェア)の配布を終える期日のことです。EOLを過ぎた機器は、新しい脆弱性が見つかっても修正版が提供されないため、更新作業では守れなくなります。故障とは違って見た目には何も起こらないため、期限は人が管理する必要があります。
Q. どの機器から更新すればいいですか?
外から接続を受ける機器が最優先です。①VPN装置・ファイアウォール、②ルーター、③無線アクセスポイント、④社内スイッチの順に進めてください。警察庁の調査ではランサムウェアの侵入経路はVPN機器が6割以上を占めており、外向きの1台を手当てするだけでも効果は大きくなります。
Q. 自社の機器のサポート期限はどう調べますか?
機器本体や管理画面で型番を確認し、メーカーのサイトでサポート期限と最新ファームウェア版数を調べます。保守契約や設置を依頼した業者がいる場合は、「導入機器のサポート期限一覧がほしい」と依頼するのが最短です。調べた期限は、購入日や保証期限と並べて台帳の列に追加しておきましょう。
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サポート期限を管理するには、その機器が台帳に載っていることが前提です。SOLAMILUは、社内のネットワークとIT機器の状況を見える化し、「図面にない1台」まで含めた期限管理の土台をつくります。
