「セキュリティ対策は必要だと分かっているが、予算がない」――その悩みには、はっきりした答えがあります。国の無料支援だけでも、最初の数歩は十分に踏み出せます。この記事では、中小企業が無料で使える公的セキュリティ支援を5つに整理し、2027年3月頃に運用開始が予定されるSCS評価制度を見据えた「使う順番」まで解説します(内容は2026年9月時点)。
なぜ今、公的支援を知らないと損なのか
結論から言うと、国が中小企業向けのセキュリティ支援を急速に拡充している最中だからです。2026年だけでも、ガイドライン第4.0版の公開(3月)、講師無償派遣を含むセミナー支援の開始(8月)、SCS評価制度の基本規程公開(8月)と、支援と制度が立て続けに動いています。
背景にあるのは、サプライチェーン全体の底上げという国の方針です。中小企業の対策不足が大手への攻撃の入口になる構造(「サプライチェーン攻撃、中小企業が標的になる理由」)を変えるため、「無料の道具は国が用意するから、まず始めてほしい」という段階に来ています。しかも、IPAの2024年度実態調査では、セキュリティ対策の体制整備が「取引につながった」と答えた企業が約6割(59.8%)。使わない理由がない、というのが正直なところです。
無料で使える5つの公的支援【2026年版】
まず全体像です。無料支援は「①学ぶ → ②診る → ③宣言する → ④人を育てる → ⑤困ったら相談する」の5つの場面に、それぞれ1つずつそろっています。
- SECURITY ACTION(IPA)――無料の「自己宣言」から始める
情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、費用は無料、一つ星は「基本5項目の実践」を宣言するだけで始められます。宣言するとロゴが使え、取引先への説明や補助金申請の要件にもなります。そして最大のポイントは、SCS評価制度の★1・★2がSECURITY ACTIONを活用する設計だということ(「SCS評価制度、開始前にやっておく5つの準備」)。今宣言しておくことが、そのまま制度対応の一歩目になります。 - ガイドライン第4.0版+「5分でできる!自社診断」(IPA)――現状を無料で診る
2026年3月に改訂された「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版には、自社診断シートや規程のひな形、台帳などの付録が一式無料で付いています。コンサルに頼む前に、まず自社診断で現在地を把握し、足りない項目から手を付ける――これだけで対策の優先順位が見えます。 - 中小企業支援セミナー(IPA・2026年8月開始)――講師の無償派遣で「人を育てる」
2026年8月に始まった新しい支援で、商工会議所などの地域団体が主催するセミナーにIPAが共催し、講師を無償で派遣してくれます(開催期間は2027年2月末まで)。個社で直接申し込む形ではないため、地元の商工会議所・商工会の開催情報をチェックする、または所属団体に「IPAの共催セミナーをやってほしい」と声をかけるのが使い方です。社員教育を自前で用意できない会社ほど効きます。 - 情報セキュリティ安心相談窓口(IPA)――困ったときの無料相談
「変なメールを開いてしまった」「画面に警告が出て消えない」――そんなとき、電話・メールで無料相談できる公的窓口です。有事の連絡先として、番号を社内の連絡網に載せておくだけでも価値があります。実被害が出た場合は、警察のサイバー犯罪相談窓口も併用してください。 - 無料の「教材」を年中行事に組み込む(経産省・IPA)
経産省の「サイバーセキュリティリスク事例集」(2026年3月公表)は、中小企業で実際に起きる事故を実例で学べる無料教材です。毎年1月頃のIPA「10大脅威」(「情報セキュリティ10大脅威2026、中小企業に関わる5つ」)と合わせて、年1回の社内勉強会の定番教材にすると、教育がゼロ円で回り始めます。制度・期限の年間管理は「中小企業のセキュリティ制度カレンダー【2026-2027】」をどうぞ。
SCS評価制度を見据えた「使う順番」
結論として、この5つは「②診る→③宣言する」を先にやると、SCS評価制度への備えと一直線につながります。SCSは2027年3月頃の運用開始が予定されており、★1・★2はSECURITY ACTIONを活用する設計だからです。
有料の領域に進むときも、いきなり自腹ではありません。IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービス」のような低コストの見守りパッケージは、デジタル化・AI導入補助金2026のセキュリティ対策推進枠の補助対象です(1次締切は2026年9月29日。以降の公募回は随時公表。「中小企業のIT補助金、2026年度の活用方法」)。無料→補助つき有料→本格対応、と段階的にお金をかける道筋が用意されているわけです。取引先から対策を求められたときの答え方(「取引先からセキュリティ対策を求められたら、どう答えるか」)としても、「SECURITY ACTION宣言済み・自社診断実施済み」と言えるだけで印象は大きく変わります。
「無料には裏があるのでは?」という心配は不要です。これらの支援が無料なのは、中小企業の対策不足がサプライチェーン全体の弱点になるため、国が政策として底上げしたいからです。SCS評価制度という「ものさし」を作ると同時に、そこへ登るための無料の道具も配っている――という関係にあります。遠慮なく使うのが正解です。人手が足りない会社の運用の組み立ては「IT人材不足時代のセキュリティ運用、現実的な解」も参考にどうぞ。
「予算がないから何もできない」は、2026年にはもう成り立ちません。
無料の道具は出そろっています。あとは、使うかどうかだけです。
まとめ:無料の5つ、使う順番はこれ
- 無料の公的支援は5つ=①SECURITY ACTION(宣言) ②ガイドライン第4.0版+自社診断(現状把握) ③中小企業支援セミナー・講師無償派遣(教育・2027年2月末まで) ④安心相談窓口(有事の相談) ⑤リスク事例集・10大脅威(教材)
- 先にやるのは「診る→宣言する」。SECURITY ACTIONはSCS評価制度の★1・★2の足場になる(SCS運用開始は2027年3月頃の予定)
- セミナーは個社申込ではなく地域団体経由。地元の商工会議所等の開催情報をチェックするか、所属団体に働きかける
- 有料の対策に進むときは補助金(セキュリティ対策推進枠)を確認。無料→補助つき→本格対応の順でお金をかける
- 体制整備は取引にもつながる(IPA調査で約6割が「つながった」と回答)。守りの話であると同時に、営業の話でもある
そして、自社診断のシートを開くと最初に気づくはずです――「うちのPCや機器が何台あるか、正確に書けない」と。無料支援を活かす土台も、SCSのチェック項目に答える土台も、結局は自社のIT環境の把握です。
公的支援の活用も、まずは社内のIT環境の見える化から始めましょう。
参考(公式情報)
※支援内容・期間・締切は2026年9月時点の公表情報です。変更されることがあるため、利用の前に必ず各公式サイトで最新の情報をご確認ください。
この記事のFAQ
Q. 中小企業が無料で使える公的セキュリティ支援には何がありますか?
代表的なものは5つです。SECURITY ACTION(IPAの無料自己宣言制度)、中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版と「5分でできる!自社診断」、中小企業支援セミナー(IPAの共催・講師無償派遣、2027年2月末まで)、情報セキュリティ安心相談窓口(無料の電話・メール相談)、経産省リスク事例集やIPA10大脅威などの無料教材です。
Q. SCS評価制度への対応も無料でできますか?
★1・★2の足場までは無料でできます。SCSの★1・★2はSECURITY ACTIONを活用する設計のため、自社診断で現状を把握し、SECURITY ACTIONを宣言しておけば、2027年3月頃に予定される運用開始を待たずに準備が始められます。第三者評価が関わる★3以上は費用がかかりますが、補助金の対象になる支援サービスもあります。
Q. 何から始めるのがおすすめですか?
「診る→宣言する」の順です。まずIPAの「5分でできる!自社診断」で自社の穴を確認し、次にSECURITY ACTIONを宣言してください。どちらも無料で、その日のうちにできます。取引先に対策を聞かれたとき「宣言済み・診断実施済み」と答えられるだけでも、大きな前進です。
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