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2025年5月23日
ゼロトラストと知覚セキュリティの親和性

ゼロトラストの関連する研究論文と、SOLAMILUの知覚セキュリティとの親和性について

近年、セキュリティ分野において注目されているキーワードが「ゼロトラスト(Zero Trust)」です。これは、「誰も信用しない」ことを前提に、常にすべてのアクセスや通信を検証・確認しながら制御するという概念です。トラディショナル(「伝統」「古風な」)な「境界防御型」のセキュリティでは、いったん内部に入ったアクセスは信頼されがちですが、ゼロトラストでは内部・外部を問わず“継続的な検証”が重要とされます。

このゼロトラストに関しては、さまざまな学術研究が進められており、例えば2023年に発表された「Scenario-Agnostic Zero-Trust Defense with Explainable Threshold Policy」という論文では、部分観測マルコフ決定過程(POMDP)やメタラーニングの手法を活用し、人間にも理解しやすい説明可能なセキュリティポリシーの実装が試みられています。

では、こうしたゼロトラストセキュリティと、私たちSOLAMILUが提唱する「知覚セキュリティ(Perceptual Security)」には、どのような関連性や親和性があるのでしょうか?


知覚セキュリティとは「気づきのインフラ」である

知覚セキュリティとは、ネットワークやデバイス、通信環境における異常や変化を、専門知識がなくても“直感的に気づける”よう設計されたセキュリティ手法です。色、構造、動きなど視覚的な要素を使って、異常状態を「見る」から「わかる」へと変換するのが特徴です。

この“わかる”というプロセスは、実はゼロトラストの本質と深く関係しています。ゼロトラストにおける「継続的検証」や「動的アクセス制御」は、ユーザーやデバイスの状態を常に監視・評価しなければ成立しません。しかし、技術的な監視だけでは、現場の担当者に異常が伝わらない、あるいは気づかれないという事態が起こり得ます。ここで“気づける”という知覚セキュリティの役割が重要になってきます。


情報の「翻訳インターフェース」としての知覚

たとえば、ネットワーク通信の急激な変動が起こっても、それがログや数値として表示されるだけでは、現場の多くの人にとっては「何のことかわからない」状態です。知覚セキュリティは、その変化を「色」や「構造の変化」として表現し、直感的に「いつもと違う」と感じさせる仕組みです。

これはちょうど、ゼロトラストにおける「リスクスコア」に似ています。状況を数値化し、そのリスクに応じてアクセスや操作を制御する手法ですが、知覚セキュリティはその“人間向け版”とも言えるのです。つまり、機械が検知した異常を、人間が即座に理解し、対応できるようにする「翻訳インターフェース」のような役割を果たします。


知覚はゼロトラストの“認知層”

もうひとつ重要なのは、「感情」や「認知バイアス」がセキュリティの盲点になり得るという視点です。SOLAMILUでは、これを「感情的セキュリティホール」と呼び、どれだけシステムが警告しても、ユーザーが“気づこうとしない”ことで事故が発生する現象として注目しています。ゼロトラストでは、技術的な検証が重視されがちですが、人間の認知的な特性も含めて監視・評価する視点が、これからのセキュリティ設計には必要不可欠です。

知覚セキュリティは、ゼロトラストの“認知層”として、技術と人間のあいだをつなぐミッシングリンク(連続性の中で抜け落ちている中間的な要素・存在・説明を指す)とも言えるのです。


まとめ

ゼロトラストはセキュリティの未来にとって欠かせないパラダイムですが、それを社会に定着させるためには、「わかりやすさ」「気づきやすさ」が不可欠です。SOLAMILUが提唱する知覚セキュリティは、技術と人間のあいだに橋を架け、誰もが“守れる社会”をつくるための思想です。

今後、ゼロトラストの実装に知覚セキュリティが組み合わされることで、セキュリティは「見る」から「わかる」へ、そして「行動できる」へと進化していきます。